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プラミペキソール

レストレスレッグス症候群の治療薬

プラミペキソール(Pramipexole)について

1) SMILES(構造式)

※臨床で用いられるのは**塩酸塩(dihydrochloride)**ですが、塩はSMILESで通常は別扱いです(遊離塩基のSMILESを上に記載)。(IUPHAR/BPS医薬品ガイド)


2) 作用機序(MoA)

  • D2ファミリー(D2/D3/D4)受容体のアゴニストで、D3受容体に比較的高親和性を示す非エルゴ系ドパミン作動薬です。(PubMed)
  • 受容体の保存的残基 Asp3.32に対して、プロトン化したアミンが塩橋を形成して結合を安定化します。D3受容体-Gi複合体のクライオEM構造(PDB: 7CMU)でも、ドパミン作動薬の典型的結合様式が裏づけられています。(RCSB PDB)
  • D3活性化時にはTM5のSer5.42/Ser5.43と水素結合を取りうることが示されています(アゴニスト活性構造解析)。(PMC)

3) 効果(臨床での働き)

  • パーキンソン病:寡動・固縮・振戦などの運動症状を改善し、L-ドパ併用時は「オフ」時間の短縮に寄与します。(PMDA)
  • レストレスレッグス症候群(RLS/むずむず脚症候群):脚の不快感・運動欲求・睡眠障害の改善が期待できます。(PMDA)

4) 日本での適応(添付文書)

  • パーキンソン病
  • 中等度~高度の特発性レストレスレッグス症候群(下肢静止不能症候群) (詳細はPMDA公示の添付文書をご参照ください。)(PMDA)

5) 構造式の「どの部分が何をするか」

SMILES中の主要モチーフと役割を機能面で整理します。

  • N6-プロピル置換の二級アミン(CCCN- で始まる部分) 生理的pHでプロトン化されやすく、Asp3.32との塩橋形成を担う“アミンヘッド”です。ドパミン様リガンドに共通の結合アンカーで、結合力と活性化の起点になります。(preprints.org)
  • C2位のアミノ基(…sc(n2)NN Hドナー/アクセプターとして振る舞い、TM5のSer5.42/Ser5.43などと水素結合ネットワークを取りやすい部位。アゴニスト配座の安定化と選択性に関与します。(PMC)
  • テトラヒドロ-ベンゾチアゾール骨格(…c2c(C1)sc(n2)… 疎水性の芳香/複素環骨格で、疎水ポケット適合BBB通過性(分子量小・極性表面積控えめ)に寄与。S原子/環N原子H結合アクセプターとしての寄与を持ちます。(IUPHAR/BPS医薬品ガイド)
  • 立体化学([C@H]、6S) 活性はS(−)体に偏在し、R(+)体=デクスプラミペキソールはドパミン受容体親和性が著しく低い(=別作用プロファイル)ことが示されています。立体配置は受容体内での必須三点相互作用の幾何を決め、効力・選択性に直結します。(PMC)
  • N-プロピル鎖(疎水テール) D2/3ファミリーの疎水性副ポケットへのフィットに貢献し、D3寄りの結合姿勢に有利に働くと考えられています(D3選択的誘導体のSARからの推論)。(セル.com)

補足(安全性の要点)

傾眠・突発性睡眠、起立性低血圧、**衝動制御障害(病的賭博・性欲亢進・強迫性購買・暴食など)**が知られています。症状出現時は減量/中止等を検討し、患者・家族への事前説明が推奨されています。(PMDA)



Kiの目安(nM)

上段に代表値、括弧内は実験系によるおおよその報告幅です(細胞系・放射性リガンド・G蛋白質状態でブレます)。

  • D30.50.4–1.5 程度) → D2より5–10倍ほど高親和性。
  • D2L3.93.3–4.8) / D2S3.33.3–3.9) 。
  • D4~54–6)。
  • α2-adrenergic~250
  • 5-HT1A~3000以上D1/D5>10,000(実質的に無視できる親和性)。

(上の数値はPMDA 提出資料製品モノグラフに基づく代表値です。)

|Receptor|Ki (nM)| |—| |D3|0.5 ≈ (0.4–1.5)| |D2L|3.9 ≈ (3.3–4.8)| |D2S|3.3 ≈ (3.3–3.9)| |D4|5.1 ≈ (4–6)| |α2-adrenergic|≈250| |5-HT1A|≈3000+| |D1 / D5|>10,000|


7CMUに基づく簡易結合スケッチ

  • 図では、アミン–Asp塩橋(TM3 Asp110^3.32)、TM5 Ser192^5.42/Ser196^5.46 近傍の水素結合ネットワーク(概念図)、TM6の芳香族クラスター(Trp342^6.48 / Phe345^6.51 / Phe346^6.52)との疎水/π相互作用、そしてN-プロピル鎖の疎水ポケット侵入を示しています。(PDBj)

  • 7CMUはヒトD3受容体‐Gi複合体にプラミペキソールが結合したクライオEM構造(分解能約3 Å、公開 2021-03-10)で、アゴニスト結合により活性化様式が示されています。(PDBj)

図のPNGはこちら(2種類あります。日本語ラベルは環境により文字化けする場合があるため英語版も同梱):


ポイント解説(SARと役割のひも付け)

  • プロトン化二級アミン(N):TM3のAsp110^3.32塩橋を形成し、結合のアンカーに。アミナージックGPCRに共通の必須相互作用です。(MDPI)
  • ベンゾチアゾール骨格芳香/疎水ポケットに適合し、TM6の芳香族残基クラスターとπ–π/疎水相互作用を取り、結合の安定化に寄与。(MDPI)
  • N-プロピル鎖:TM6側の疎水性副ポケットに差し込み、D3に有利な結合姿勢をとりやすくします(D2/3で微妙に形が異なる外側ポケットの利用が選択性に寄与)。(PubMed)
  • TM5 Ser192/Ser196:ドパミンのカテコールOHでは典型的にH結合を作る部位。プラミペキソールはカテコールOHを持ちませんが、周辺のH結合ネットワークの構築に関与しうる配置が示唆されます(概念図として表示)。(MDPI)

必要なら、7CMU座標にGPCRdb番号を直接書き込んだ注釈図や、受容体側距離(Å)ラベルを追加したバージョンも作れます。 (その場合、示した相互作用は静止スナップショットの概念図であり、実際のダイナミクスや実験条件により多少の差異が出る点はご了承ください。)

参考:7CMU概要(PDBj)、Mol Cell の原著論文概要、PMDA/製品モノグラフ(Ki)。(PDBj)

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